それでは、どうやって組織全体のレベルを引き上げるのでしょうか。残念ながら、下位2割を直接引き上げることは困難です。教育研修を施したとしても、直接の育成ではあまり成果を見込むことはできません。
上位2割の層をさらに伸ばして、上から組織を引っ張っていってもらおうと考えるかもしれませんが、これも必ずしも有効ではありません。そもそも上位2割の層は、組織が手を施さなくても勝手に伸びます。意識が高くて自分から勉強するからです。むしろ上位2割だけがどんどん伸びて、中位以下との差が開くと、組織を離れてしまうことも考えられます。
優秀な上位2割は、日頃から周囲が自分の基準やスピードに追いついていないことをはがゆく思っています。周囲がついてこれないことに、煩わしさ、面倒くささを感じているのです。さらにその差を広げてしまっては、レベル差が開きすぎて、ますます他の人と話が合わなくなります。バカバカしくなり、やってられないと感じるようになって、組織を離れる道を選んでしまいがちになるのです。
したがって、中位6割に対して、求める基準を高くしていったり、教育研修でレベルアップをしたり、評価システム変えたりすることが有効です。真ん中のレベルが上がってくると、上位の2割もそれに突き上げられてさらに伸びることになります。下位2割との差が開きますが、この層の人たちは組織にしがみつこうとします。「会社に見捨てられたら困る」「居場所を失いたくない」「ここをやめたら行くところがない」と食らいつくようになるのです。
中位6割の上昇にしがみつこうとして、結果的に下位2割のレベルが上がっていきます。組織の中では、相対的にはレベルは低いかもしれませんがが、世間一般の水準で考えれば、十分に仕事はできるということになります。中位6割に焦点をあてて教育研修を行い、全体のレベルを引き上げることで、下位2割の層のレベルも上がっていくのです。