リーダーの役割は、環境変化に対応するために、自ら変化を起こすことです。極論を言えば、組織を取り巻く環境が何も変化しないのであればリーダーは必要ありません。これまでと同じことを、同じように続けていく。それで十分だからです。
しかし、実際にはそんなことはありえません。むしろ、環境変化のスピードが速く、世の中のスタンダードや常識が次々と変わっていく現代においては、政治や経済の動き、社会の変化、技術の革新に合わせて、事業や組織をどんどん変化させていかなければ、市場から取り残されていくことになります。
慣れしたしんだ事業、業務内容、仕事の進め方から離れて、自ら新しいことに取り組むのは決して容易ではありません。むしろ面倒だと感じることの方が通常でしょう。人は誰しも、変化を嫌い、安定を求めにいく性質を持っています。個人レベルでもそうなのです。ましてや、複数の人の利害を調整しながら組織を動かしていくためには、強いエネルギー、リーダーシップが必要です。
環境の変化に対応するために、自分たちの組織をどのように変えていけばいいのか。それを考えて、実行に移す。すなわち、「やることを決める。決めたことをやる」ことがリーダーの仕事です。目標を定め、そのための工程を計画として描き、自ら立てた規範に従って、自らを動かしていく。これを「自律」と呼びます。読んで字のごとく「自らを律する」ことです。
そして、チームのメンバーなど他の人を動かしていくためには、誰よりもまず、リーダー自身が率先して自分の規律を守っていくことが必要です。どれだけ崇高なことを声高に唱えても、言っていることを自分自身がやっていなかったら、周囲の人はついてきません。「お前がいうな」「まず、あなたがやれや」と、冷ややかな視線を浴びることになります。
言っていることとやっていることが一致していない人の発言を、人は信用できません。言行を一致させ、自分自身の一貫性を保つことがリーダーに求められる資質です。自分が掲げた理念や目標に対し、自分自身が誰よりも本気になり、信念を持って、態度と行動で示していく。そうした姿に周囲は惹きつけられ、リーダーの考えに付き従おうと考えるものなのです。
したがって、リーダーは、人を動かす前にまず自分自身をコントロールしなければなりません。やると決めたことを、決めた通りにやり切る。そのために自らを律していくことが、セルフマネジメントなのです。