企業の経営者や管理職に、部下指導や育成の悩みについてお伺いすると、大抵の場合このような答えが返ってきます。
「言われたことはキチンとやってくれる」
「自分で課題を探して、言われたこと以上のことができるようになって欲しい」
「自分で考えて、考えたことを自分で実行できるようになって欲しい」
つまり、自ら考えて行動する「自律型人材」になって欲しいということです。
自律とは「他からの支配・制約を受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動する」という意味です。これをわかりやすい言葉に言い換えると「何を、どのようにするべきかを自分で考え、それを決めたとおりに実行すること」であると言えます。
すなわち、
・やることを決める(課題の設定)
・決めたことをやる(課題解決策の実行)
の2つを自らの手で行うことであると言えます。
言葉にしてしまうと「なんだ、そんなことか」と思えてしまうような話ですが、実際にはこの課題の設定が必ずしも容易ではありません。なぜなら、仕事の目的や全体像を知らなかったり、見失ったりしてしまうと、仕事は単なる作業や労働、場合によっては苦役になってしまい、決して自ら進んでやりたいと思うものではなくなってしまうからです。
また、仕事の目的や全体像を理解していたところで、そこに自分自身の興味や関心がなかったり、自分の価値観と異なっていたりしたら、やはり進んでやりたいとは思わないでしょう。与えられた作業にしっかりと応えておけば、それで十分仕事をしていると考えるようになってしまってもおかしくはありません。
新人や若手社員が必ずしも指示を待つような仕事をしているとは限りません。中には、主体的に意欲的に仕事を作り出していくような働きぶりを示す方もいるでしょう。しかし、やはり多くの場合は、上司からの「次の指示」を待ち、与えられた作業を終えて、また「次の指示」を仰ぎにいくような働き方になっているのではないでしょうか。
いまや管理職の9割がプレイングマネジャーになっているとも言われます。労働基準法の改正もあって、一般層の従業員の時間外労働を制限するあまり、ますます管理職の負担が大きくなっている場合もあります。すべてを上司が指示し、コントロールするのは困難であり、部下に「自ら考えて行動して欲しい」と願うのは当然だとも言えます。
では、どのようにしたら「指示待ち」の従業員が「自律型人材」になるのでしょうか。